ひとひらの記憶
それからずっと俺は、君の噂をいろんな人に聞いてみるようになった。
俺のクラスの連中は誰も君の事知らなくて、俺がほかのクラスの奴とか、後輩とかに尋ねまわってんの見て冷やかしてきた。

でもあんま気になんなかったんだよな、コレが。
冷やかしてくる奴らにはっきり言い切れた。
うるせぇ、俺は彼女が好きなんだ。好きな子のこと追って、何が悪い。って。

そのときの俺は、まだ君が好きってことを自覚してなくて、奴らに言ってやっと自分の気持ちに気づいた感じ。
自覚してからは、積極的に君の事を追いかけ始めたかな。
いつも廊下で君の姿探してた気がする。

んであるとき、君の病気のことを聞いた。
正直びっくりしたけど、同時に俺は、君を守ってやりたいと思った。
だから、君に告白する決心がついた。

俺は君が好きです。付き合ってください。

こんな、いきなり知らない相手から好きって言われても、君は困るだけだと思う。
そんなの分かってる。でも、俺は君が好き。

明日の放課後、屋上で待ってます。
まずは友達からでもいい。
今すぐには返事できませんでもいい。
はっきり断ってくれてもいい。
そのときはきっぱり君の事は諦めるから。
とにかく、君からの返事がほしい。
待ってるから。君が来るまで、ずっと。

どうか、よろしくお願いします。

                                          夏目悠 』

不器用な、でも優しくて暖かい手紙。
私は、悠さんにこんなに愛されていたんだね。

私はこの手紙を読んで、悠さんになんて返事をしたか覚えていない。
それは、とても悲しかった。

こんなに私のことを愛してくれている悠さんに失礼だよね。

どうして……。どうして私は記憶を失ってしまったんだろう。
どうして私を選んだのかな。神様……、どうして……?

ぽた、ぽたと、手紙の上に水滴が落ちた。
私の視界が霞んで、文字が読めない。

あれ、おかしいな。さっきまで見えてたのに……。

それが涙だと分かるまでに数秒を要した。
私はずっと、手紙を抱きしめ泣き続けた。
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