ひとひらの記憶
キスより先に欲しいもの、それは……。


「頭撫でてほしいな」


私は、そう呟いた。


そう。手術が終わって、目が覚めたら、悠に


“頑張ったな”


そう言って、頭を撫でてほしかったのだ。


悠は、一瞬驚いたが、すぐに笑って、


「よっしゃ、分かった。髪の毛、超くしゃくしゃになるまで撫でてやる」


そう言ってくれた。


「うん!!」


私は、嬉しくなって、笑った。


その時だった。

病室のドアがノックされ、看護師が入ってきた。


「ぁ…………」


手術の始まる時間が近づいたのだ。
今から、手術室へと向かう。


「それじゃあ悠、いってきます」


私は、そう言うと笑った。


もしかしたら、この笑顔は、引きつっているかも。


そう思っていた時、悠が私の手を引っ張った。
そして、優しく、唇にキスをする。


「……えッ?」


突然のことにびっくりし、顔を赤くして悠を見た。



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