ひとひらの記憶
“沙良…帰ってきたら、頭撫でてねって言ったの、お前だろ? 頑張ったねって、褒めてってさ…。死んだら、褒めてあげられないだろ? 頭撫でてやったって、意味ないだろ?”


悠……私も悠に頑張ったねって、頭撫でて欲しいよ。


“死ぬなよ、沙良。お願いだから……沙良ッ!!”


私、死ぬの? 此処で、死んじゃうのかな。

そんなの、嫌だよ。
死にたくない…死にたくないよ。生きたい。

生きたいよ…―――悠。




その時、突然目の前に光が見えた。

「え……何、これ」

私は立ち上がり、光へと向かって走った。
途中、何回も躓いた。でも、その度に起き上がり、光を目指して、無我夢中で走った。



それからの事は、覚えていない。
そして、どうして光に向かって走っていたのかも。
光に向かって走り出す前、何があったのかも、この時には、覚えてはいなかったのだと思う。
気が付くとそこは……。


―――――まったく知らない世界だった。




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