ひとひらの記憶

-記憶喪失-

「…ら。…………沙良」


誰かの話す声で目が覚めた。
知らない人たちに囲まれている。


私が目を覚ますと、皆が私を見て、嬉しそうに微笑んだ。


「沙良!! 良かったね、成功だよ」


男の子が、恐らく私に話しかけてきた。
私と同じくらいの年の男の子。


―――誰だろう、この人。


彼は、茶髪の髪だった。そして、長身。
分類するなら、かっこいい系の人だ。


見覚えがある気がする。
でも、誰か分からなかった。


私は、彼を凝視してしまっていたらしい。
ハッとして、彼を見ると心配そうに、此方を見つめていた。


「沙良? どうかした??」


沙良……。
沙良って、誰?

それ以前に……―――私は、誰?


「……誰?」


ふいに、私の口から出た疑問。
彼は、酷く驚いたようだ。


「冗談…だろ? 俺のこと、分からないのか?」


私が静かに頷くと、彼は悲しそうな顔をした。


「悠…だよ。夏目悠。名前聞いても、やっぱ駄目?」

「分からない…。ごめん…なさい」


思い出そうと、必死で努力したが、思い出せなかった。記憶がなくなっていたのだ。
生まれてから今日、生きてきた人生の記憶がない。

思い出そうとすると、頭が痛んだ。



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