ひとひらの記憶
40代前半くらいの女性が、話しかけてきた。
恐らく、私の母親くらいの年齢なのだろう。
もしかしたら、この女性が母親なのかもしれない。
彼女は、美しい女性だった。
「沙良…私も分からないかな?」
「分からない…。ごめんなさい……」
私は素直にそう答えた。
女性は一瞬驚いたが、やがて悲しそうに微笑むと、
「私はね、貴方のお母さん。皆藤美奈子よ」
と、そう言った。
この人が、私のお母さん――――……。
私はしばらく、その人を見つめた。
何か……見覚えのある懐かしい顔。
でも、やはり思い出せない。
「私の……お母さん。……皆藤…美奈子……」
その時。医師が入ってきた。
「検査は異常ありませんでした。あと一週間程で退院できますよ」
検査結果の紙を見ながらそう言うと、すぐに病室を去って行こうとした。
「あの…先生。この子、記憶喪失…みたいなんです」
その言葉にドアノブに手をかけていた医師が止まる。
手を降ろし、ゆっくりと振り返った。
「……記憶…喪失……?」
医師の声は震えていた。目は、驚愕に見開かれている。
母はこくりと頷いた。
記憶喪失――そうか、私は記憶喪失なのか。
だから、悠さんやお母さんが分からないんだ………。
恐らく、私の母親くらいの年齢なのだろう。
もしかしたら、この女性が母親なのかもしれない。
彼女は、美しい女性だった。
「沙良…私も分からないかな?」
「分からない…。ごめんなさい……」
私は素直にそう答えた。
女性は一瞬驚いたが、やがて悲しそうに微笑むと、
「私はね、貴方のお母さん。皆藤美奈子よ」
と、そう言った。
この人が、私のお母さん――――……。
私はしばらく、その人を見つめた。
何か……見覚えのある懐かしい顔。
でも、やはり思い出せない。
「私の……お母さん。……皆藤…美奈子……」
その時。医師が入ってきた。
「検査は異常ありませんでした。あと一週間程で退院できますよ」
検査結果の紙を見ながらそう言うと、すぐに病室を去って行こうとした。
「あの…先生。この子、記憶喪失…みたいなんです」
その言葉にドアノブに手をかけていた医師が止まる。
手を降ろし、ゆっくりと振り返った。
「……記憶…喪失……?」
医師の声は震えていた。目は、驚愕に見開かれている。
母はこくりと頷いた。
記憶喪失――そうか、私は記憶喪失なのか。
だから、悠さんやお母さんが分からないんだ………。