昔の真の暗 裏の裏の光
夜の街へ
通学手段は電車。
学校最寄り駅から自宅最寄り駅まで、約20分かかる。それぞれ駅まで徒歩10分くらいかかるから、合計すると通学時間は40分くらい費やしていることになる。
薄暗くなった中で、電車に揺られる。
自宅最寄り駅では、今日は降りない。何故って、母親に呼ばれたから、親の仕事場まで行かなければならないため。
正直、行きたくない。
俺はあの場所は好かないのだ。
3つ程駅を通り過ぎ、目的地へ着く頃には、もう7時に近い時間になっていた。
母親の仕事場まで、その街を歩く。この街は、時間が深まる程に賑やかさを増している。
地元での別名は“夜の街”。
所謂、夜の仕事の店が多いのだ。
俺の母親も、実はその一員。
理由は簡単だ。…儲かるから、ただそれだけ。
うちは、母子家庭だ。俺が小学3年の時に父親と離婚して、母親が俺を引き取った。
最初は普通のパートの仕事をやっていたのだが、生活が苦しくなり、今の仕事に変えた。
─どんっ。
「ぁ、すんません。」
「いいえ〜。此方こそごめんなさい。」
戦後左右に行き交う中を俯き気味に歩いていると、激しく肩をぶつけてしまった。
明らかにぶつけたから、一応謝る。
返ってきた声は、男の声変わりする前の様な高いもので、この街では少し浮いているように感じた。
もっとも、浮いているのは、俺も負けていないのだろうけど。