身長差15センチの関係
そこでまた揺れる列車。
繰返し弓倉の身体に倒れかかる高志。

「わ、わ、先生、あうっ」

高志はなんとか自分の足で踏ん張り、弓倉から離れようとするが、
満員となった車内で一度失ったバランスはなかなか戻せない。

戻りかけたところにまた列車の揺れが来て、弓倉の腕の中でじたばたともがき、結果、かえって何度も弓倉の身体に密着することになる。

「あう、あう、あう」

弓倉に迷惑をかけてはいけないという気持ちが高速でめぐって、半ばパニックになる高志。

その高志の身体を弓倉は抱えなおして囁いた。

「落ち付け、少年」
「・・・・・・あ」

身を包むふわっとした感覚。
高志が見上げれば、弓倉が柔らかく笑っている。

「ここから先はカーブが多い、客も減らない、捉まるものがないなら大人しく私に頼っていろ」

「でも」

「私は教師で、君は生徒だ。そう考えていれば恥ずかしいということも・・・・・・、ないとは思うがそういうことにしておけ」

弓倉は高志を目の中に収め、出来の悪い生徒に個人授業を施すように見つめた。

「そう言われても・・・・・・」

気恥ずかしさでいっぱいの高志。

「くりかえすが、儲けたと思えばいい。比較者を慎重に選べば、私もまだ若い女のはずだからな」

そこまで言って、弓倉は冗談だと付け加えるように笑った。

「だから迷惑だとは言うな、私にもプライドがある」
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