身長差15センチの関係
弓倉がくるくるとカップを揺らしてコーヒーを掻き混ぜ、高志の知らない思い出の世界に目を伏せる。

そこからやがて斜めに目が高志に向けられて、高志は、弓倉にもう一度尋ねられた。

「煙草を吸う私は嫌いか?」

その穏やかな顔。
弓倉のふたつの瞳に、高志の顔がしっかりと映っている。

「・・・・・・あ」

高志は何とか答えを言おうとして、何と言っていいのか分からない。

「あの、その・・・・・・」
「うむ」

高志が答えるまで、いつまで待っていようという弓倉の視線。

高志はヒートしきった頭で答えを言う。

「僕は煙草の匂い、あまり好きじゃないです」

「そうか」

高志の目に、そう答える弓倉があまりにも穏やかに見えたから。

「でもっ、先生のことは好きですっ!」

高志は思わず、叫んでいた。
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