それからの物語~続・サッカーボールと先輩とアタシ~
「俺に諦めて欲しいワケ?」
不敵な笑みを浮かべ、先輩は俺だけを見つめる。
「………。」
「じゃあ殴らせもらおうかな。彼女の前で、ボコボコに。」
「!!」
背中がグイッと伸びた。
風が生暖かくて、そして俺達の間をゆっくりと吹き抜ける。
「そうだな、それいいじゃん!足の一本でもいいけど、こいつがサッカー出来なくなったら学校中の女に恨まれるわ!」
この状況をヤツらは楽しんでいた。
――やっと分かった。
岩城さんが言っていた意味が。
万桜を守る為に殴られたり、謝ったり、って。
岩城さんもこんな風に、万桜を好きだっていうヤツに……。
今の自分に岩城さんを重ねた。
万桜を諦めてくれ、と頭を下げているその人も、想像できた。
万桜は知らないだろう。
岩城さんは、何も告げずに一人で処理していたのだろう。
胸をギュッと掴まれたようだ。
過去の人に。
「そ、それならアタシを殴って下さい!」
万桜の声だった。
緊張しているかのように、いつもよりトーンが高くなっていた。