それからの物語~続・サッカーボールと先輩とアタシ~
「旬くん久し振り。」
『旬くん』と旬磨先輩を呼んだその人は、長い髪をかき上げた。
きちんとした化粧、会社の制服。
そしてタバコの匂い。
…大人だ。
「ども…。」
旬磨先輩は伏し目がちのまま、その人を見ずに軽く頭を下げる。
「おい!」
追い付いたヒロ先輩は、その人の腕を引っ張った。
「なんなんだよ、いい加減にしてくれよ。」
ヒロ先輩の険しい表情に、ただならない雰囲気があった。
「やぁだー、どうして怒るの宏慶。」
宏慶…。
そう呼ばれていたんだ。
よく分からない気持ちが込み上げてきた。
「だから――。」
アタシをチラチラと気にする先輩。
気持ちが、顔が固まってしまって上手く笑えない。
「宏慶に好きな子が出来たって、美華に聞いたからどんな子かなって!」
「はぁ?」
開いた口がふさがっていない…ヒロ先輩。
「この子でしょ。」
「………。」
その人はチラリとアタシを見て、ヒロ先輩に視線を戻した。
「いい加減にしてくれよ。もう帰ってくれないか!」
冷たく言い放った。