それからの物語~続・サッカーボールと先輩とアタシ~
走る足音が聞こえた。
すぐにヒロ先輩だと分かった。
「万桜…。」
肩に大きな手が触れた。
やっと顔を上げる事が出来た。
アタシを見つめる先輩は、いつものように優しく穏やかだった。
「宏慶…。」
その人はすがるような目で、近付いて来る。
「ちょっと待っててな。」
アタシの髪をかき上げて、静かにそう言った。
そして、おもむろに立ち上がり歩き出す。
「ごめんね、ヒロ。姉貴が彼女と話したいっていうから…勝手にごめん。」
「……。」
「宏慶…。」
先輩の背中越しに、その人は子供のように泣いていた。
「静佳、ごめんな。俺、万桜を愛してるんだ。」
「そんなの嘘でしょ。まだ私達やり直せるはずでしょ。だって、私と別れた後も彼女なんて作らなかったんでしょ!まだ私達…。」
その人は先輩の腕を掴み、何度も動かす。
ヒロ先輩はされるがままだった。
「それは違うんだ静佳。俺達は、あの時でもう終わってたんだ。」
その人は、泣き崩れた。