それからの物語~続・サッカーボールと先輩とアタシ~
アタシとヒロ先輩はベンチに座っていた。
離れた場所にある、もうひとつのベンチには静佳さんと美華さん。
美華さんはなだめるように話し掛けているようだった。
「大丈夫だったか?怖かったろ、ごめんな。」
足の上で、ヒロ先輩の手が優しくアタシの手を包み込む。
「……。」
「痛くないか?」
起こった事を美華さんが、簡単に説明していた。
「難しいよな、きちんと伝えたつもりなのに…。」
力なく笑う。
分ってるよ、先輩。
誰も悪くないし、誰も責められない事を。
「…ヒロ。」
美華さんだ。
「彼女も、本当にごめんなさい。」
アタシ達の前で、深く頭を下げた。
「姉貴、ちょっとお酒も入ってて不安定になってたみたい。」
チラリと静佳さんを見ると、額に手を当てていた。
「もう大丈夫みたいだから、美華が送ってくね。」
「ああ、頼むな。」
アタシ達の手は繋がったまま。
「じゃあね。」
美華さんは手を上げて、くるりと背中を向けた。
「ヒロ。」
そしてまた、こっちを向いた。
「変わったね、ヒロ。優しくなったっていうか、人の事思いやれるようになったね。昔みたく、平気で相手を傷付けるような事言わないんだね。」
美華さんはアタシをチラッと見て、走って行ってしまった。