恋人遊戯Ⅱ
やっぱり誰もいない廊下に出た俺は、すぐに歩き出す事を少し迷っている事に気付いてた。
部屋を飛び出して来るんじゃないかって考えてる。妻ちゃんの事を引きずってる赤坂の傷心を逆手に取る事も考えたけど、何だか、それをする事が俺的に嫌だった。
赤坂の事が気になる理由が俺は自分の事が分からない。
本当は無理やりにでも赤坂の話を聞き出したいって思ってるけど、そんな事をしたって余計に嫌われるしな。
…って、今でも嫌われてるっつーのッ!
ホテルを出る時に無理やりだったとは言え、女の子にホテル代を払わすなんて情けない事はしたくなくって俺はポケットに入れたままの財布を取り出して中を確認した。
あぁ…さらば現金ちゃん…。
ちきしょー! 学校がバイトOKなら、絶対にしてたのになっ!
外に出たら、空がオレンジとも赤色とも言えない色で染まっていた。
そんな空を眺めていると赤坂の笑った顔を見た事がないのに気付いた。だいたいが、無表情しか見た事がない。
あいつが笑ったらどんな顔なんだろう。…確か、妻ちゃんの前では表情が俺の前とは明らかに違う。
落ち込んでた俺にポケットに入れていたケータイが、その場には相応しくない音を鳴らした。