恋 時 計 ~彼はおまわりさん~
「祐介……さん」
顔から火が出ちゃうんじゃないかと思った。
初めておまわりさんの名前を口にしちゃったよ……。
おまわりさんは、真っ赤になった私の頭を優しく撫でて、
「よろしい。『さん』はいらないけどね」と笑った。
おまわりさんがこんなふうに意地悪だなんて知らなかった。
優しいところとか、強い眼差ししか知らなかった。
けど、意地悪なおまわりさんも好き。
おまわりさんを知るたび、好きなところがどんどん増えていくよ……。
乗車客が減ったバスの中、手を握ってくれたおまわりさんの手を、ゆっくりと握り返した。