恋 時 計 ~彼はおまわりさん~
「美樹と付き合ってるんですか?」
圭ちゃんの合唱部で鍛えた透る声……
そんな大きな声で言ったら、あの警察官に聞こえちゃうよ。
私は心の中で、圭ちゃんの声が警察官に聞こえてないように祈った。
そして警察官の影を探すように後ろを振り向いた私の耳に、おまわりさんの声が聞こえた。
「さぁ、どうかな……」
おまわりさんの言葉で、街のざわめきが一瞬消える。
今、なんて言ったの……?
おまわりさんの顔を見上げた私の胸は、ズキッと痛んだ。
「え~、付き合ってるんじゃないんですか?
美樹、こんなかっこいい人とどこで知り合ったのー?」
明るい圭ちゃんの声に、私は笑顔で答える。
「教えなーい!」
「美樹の意地悪~!
今度お友達紹介して下さい。女子高だから出会いがないんです」
おまわりさんは笑顔で頷いて、
「バイバイ」と去って行く圭ちゃんに手を振った。