恋 時 計 ~彼はおまわりさん~
朝、鏡で自分の腫れた目を見て、
一晩経ってもおまわりさんと別れた事実に変わりはないことを実感した。
胸が痛い。
胸が苦しい。
胸が……
この思いは言葉に出来ないよ。
食卓の上にお母さんが用意してくれたお弁当が置いてあり、
私は無言のまま、まだほのかに温かいお弁当を鞄に入れる。
その時、あるものが目にとまった。
これは、何……?
お弁当の隣に置いてあるハンカチに包まれた小さなものを手に取ると、氷のような冷たさが手に伝わってきた。
これって……
ハンカチを捲ると、中にはアイスノンが入ってた。
私が熱を出すと、お母さんがいつも額にのせてくれるアイスノン。
「お母さん、ありがとう。行ってきます」
「いってらっしゃい」
微笑むお母さんは、とても優しい目をしていた。
優しさって、言葉だけじゃないんだね。
こんなふうに表わせるんだ……。
私は失恋して、
お母さんとおばあちゃんの優しさをいっぱい感じた。
優しさの意味を知った。