恋 時 計 ~彼はおまわりさん~
「鈴木先生、帰ったって……」
「えっ、帰っちゃったの!?」
「……うん」
もうやだ。
鈴木先生なんて大っ嫌いだ。
私の携帯も、私の誕生日も忘れてるんだ。
あんなに親身になって私の話をきいてくれてたのに……
先生のバカ。
先生が帰ったということで、私は先生に自分の存在自体を忘れられたように思えた。
落ち込んで靴を履き替えていると、智子が突然口を開いた。
「私の携帯から美樹の携帯にかけてみる?
先生に戻ってきてもらおうよ」
「でもそんなことしたら、智子まで携帯持ってきてたことバレちゃうよ?」
「いいよ。そんなの平気。
それに、おまわりさんといつでも連絡とれる状態にしといた方がいいでしょ?」
笑顔で携帯を私に差し出す智子は、私の心がまるで見えているみたいだった。
「ありがとう」
私は顔の前で両手を合わせた後、智子から携帯を借りた。