恋 時 計 ~彼はおまわりさん~
「よかったぁ」
ほっとした私は、笑顔で口にした。
「よかったな」
「うん、ありがとう。おまわりさんのおかげだね」
「そんなことないよ。
それより、良くないことが一つ残ってるんだけど」
「ん……?」
おまわりさんが濡れた手をタオルで拭きながら横眼で私を見ている。
私はおまわりさんの顔を見ながら首を傾げた。
良くないことって? なに?
さっぱり思いつかないという答えが私の顔に現れ、おまわりさんは寂しそうにため息を漏らした。
もしかしておまわりさん、今落ち込んでる?
私、何を忘れてるんだろう。
何かあったような気がするような……ないような……
考え込んでる私の顔を、作り笑いで覗き込みながらおまわりさんが口を開いた。
「『祐介さん』はどこにいったの?」
おまわりさんの言葉に、私は大きく口を開いた。
そうだ、そうだった。
私、ずっとおまわりさんを名前で呼んでない。
一度下に落とした視線を、恐る恐るおまわりさんに向けた。