恋 時 計 ~彼はおまわりさん~
「わかったよ。買うから付き合って?」
えっ!?
何言ってんの、この男!!
財布から500円玉を出した男が、にっこりと笑って智子の顔を覗き込んだ。
「ちょっと、やめて下さい!」
私は智子の前に立ち、男達との距離をとった。
それでも声をかけてくる男達。
「ねぇ、君たちなんて名前?」
この人たち、しつこい。
この場から離れようとしない男たちを、私は思いきり睨みつけた。
「いい加減にしないと、大変なことになりますよ」
「大変なこと? 先生呼んできちゃうとか?
俺たち教師なんて怖くねーよ」
私の口から出たはったりは、男達の虫唾が走る笑い声によってすぐに消されてしまった。
どうしよう……。
智子の手を握ると、微かな震えが私の手に伝わってきた。
怖い。
私も怖いよ……。
男たちへの嫌悪感が恐怖感へと変わる。
こんな時、おまわりさんが近くにいてくれたら……
そう思うと、次第に私の視界は涙によって歪み始めた。
「あれ、もしかして泣かせちゃった?」
面白がるように笑いを含めた男の声。
悔しい……。
私は男たちに涙を見せたくなくて、顔を下に向けた。