恋 時 計 ~彼はおまわりさん~
「遅くなってごめんね」
おまわりさんの優しい声と眼差しに、私は首を横に振った。
おまわりさんが来てくれた……それだけで嬉しいよ。
ほっと笑みを零すと、おまわりさんが安心したように目を細めて笑った。
「智子、こいつらどうしたい?」
拓也くんが一人の男の肩に手を置いて、脅すようにその手に重力を加えた。
「どうもしなくていいから、早く帰ってほしい」
男を睨みつけて口を開いた智子の声は力強く、恐怖感というものが全くない。
やっぱり好きな人が傍にいると、一気に心強くなるよね。
私は智子の言葉に追い風を吹かせるように大きく頷いた。
「だってよ。良かったな~」
笑みを見せて言った拓也くんは、男の肩を思いきり叩いて男を解放した。
男はすぐに逃げ出し、仲間の男達もその男に釣られる様に急いで足を動かした。
「もう二度と来ないでよ!」
私と智子は、男達の背中に向かって舌を出した。
そんな私たちを見て、笑顔を見せるおまわりさんと拓也くん。
男達の姿が消えた後、四人で顔を合わせて笑った。