恋 時 計 ~彼はおまわりさん~
まただ……
胸の真ん中がギュッと握られるような変な気分。
私は気持ちを切り替えたくて、視線を遠くに向けた。
あ、鈴木先生……。
校舎からこっちに向かって歩いている鈴木先生が視線の先に止まった。
コンクリートの階段に捨てられている紙くずを拾い上げ、ぎゅっと握りつぶしポケットの中に入れた先生。
先生は立ち止まっていた足を動かすと同時に、額の汗を腕で拭った。
「美樹ちゃん?」
おまわりさんの声に振り返ると、おまわりさんの視線は先生に向けられていた。
「あの先生がね……」
「やったーー!!」
電話で話したことのある鈴木先生だと言おうとした時、拓也くんの声が大きく響いた。
「釣れた! 釣れたぞー!!」
「そんなにはしゃがないでよ~」
微笑ましく思える智子と拓也くんの会話に視線を落とした。
「よかったね、拓也くん」
「おぅ!」
私は嬉しそうにはしゃぐ拓也くんに声をかけた後、もう一度おまわりさんに視線を移した。