恋 時 計 ~彼はおまわりさん~
その瞬間、おまわりさんに声をかけようとする私の行動を遮るように、先生が私たちの後ろを通った。
いつもの先生ならどんな場所にいても声をかけてくるのに、今は視線すらこちらに向けてこない。
なんだか不自然に思えた先生の背中を、私は自然と目で追っていた。
なんか変な感じ……。
小さく首を傾げ、先生から視線を外した私は、おまわりさんに先生のことを伝えようとした。
「あのね、今通り過ぎた人が――」
「鈴木先生」
え……?
私が言おうとした名前を先に口にしたおまわりさんに、私は目を丸くした。
どうしてわかったの?
先生が交番で私の携帯を渡したのは浅野さんだし、会ったことないよね?
電話でも先生のことは少ししか話してなかったのに……。