恋 時 計 ~彼はおまわりさん~


お父さんの火傷は酷く、救急車が到着した時は意識は無く、ショック状態だった。


救急処置により心音は戻ったけど……

火傷の範囲が広い。


死に至る火傷の範囲の一歩手前。



風圧により大腿骨の外傷骨折もあり、危険な状態が続いていた。




お母さんは、仙崎さんの話を涙を流すことなく聞いていた。

仙崎さんの瞳を、真っ直ぐに見て……。


おばあちゃんは、そんなお母さんの手を握り、瞼を閉じて聞いていた。



私は、膝の上にある手の震えを、必死になって抑えた。


だけど、抑えても抑えても

その震えは消えなくて……


弱い自分に押しつぶされそうになっていた。



そんな私の弱さを包み込むように、

おまわりさんは黙って私の手を握ってくれた。


とても優しく、

震えている手を温めるように……。




温かいおまわりさんの手に視線を向けた時、

もう一つのおまわりさんの手が目に入った。



その手の拳は、

痛いくらいに力強く握られ


震えていた……。






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