恋 時 計 ~彼はおまわりさん~


「事件の時の記憶が無いみたいなの……」

「え……?」

「現場に行ったことまでは覚えてるけど、その後のことが全く覚えてないって……」



それって、記憶喪失……?



「お医者さんが言うには、頭を強く打ったせいだろうって……」


ドラマの世界でしか知らなかった記憶喪失。

まさかお父さんがなるなんて……。



不安と焦りが顔に滲み出ようとした時、おばあちゃんの明るい声が響いた。



「命が助かったんだから良いじゃない」



おばあちゃんの一言の後、お母さんは微笑みながら頷いた。



そうだよね。命が助かったんだもん。

これ以上の幸せはないよ。




「けど、お父さんの記憶が戻らないと捜査は大変らしいわ。
さっき聞いたんだけど、二回目の爆発が起きた時の詳しい状況がはっきりしてないらしいの。
お父さんが助け出した関さんという方は、命には別状ないけどまだ意識が戻ってないから……」


「そうなんだ……」




私はお母さんの話を聞きながら、お父さんが無事ならそれで良い。

そう思っていた。







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