恋 時 計 ~彼はおまわりさん~
肩の下まである黒い髪が、真白い景色の中で綺麗に見える。
あの綺麗な人、誰……?
スラッとした背格好のその人は、駆け込むようにおまわりさんの家に向かって走り出した。
今、私が駆け込んで行こうとしてたのに。
おまわりさんに『よく来たね』って抱き締めてもらおうと思ってたのに。
笑顔で迎えてくれると思っていたおまわりさんは、
その女の人を家の中へ招き入れた。
用事って、その女の人と会うことだったの?
だから急に休みをとったの?
お父さんに会うことよりも、
その女の人と会うことを選んだってこと?
それほど大切な人なの……?
知らず知らず両手に力が入り、胸の中で温めていた袋から、パックがピシピシと潰れる音が響いた。