恋 時 計 ~彼はおまわりさん~
「そんなふうに見つめられたら食べ難いんだけど」
「え?」
「青木も一緒に食べよ」
先生はもう一つのパックを勢い良く私に差し出た。
けど私、食欲なんて無いよ……。
食べようとしない私に向って『喰え』って指で合図する先生。
私は稲荷寿司にゆっくりと口をつけた。
「上手いだろ?
てか、青木からもらった稲荷だから今のセリフはおかしいか」
冷たいご飯が口の中に広がると同時に、笑った先生の顔が歪んで見えてくる。
ああ、やっぱりもうだめだ。
私、泣いちゃう……。
涙の味が口の中で混ざり、鼻先がつーんと痛くなる。
先生は私に涙の訳を聞かず、「もっと喰え」って私の口に稲荷寿司を押し当てた。