恋 時 計 ~彼はおまわりさん~
「青木の涙の訳、聞かなくてもわかるから」
「え……?」
「おまえがそんなふうに泣ける相手は、おまわりさんだけだろ?」
先生の真っ直ぐな瞳と言葉に、胸の中がドキッと音をたてた。
おまわりさん……
今頃、あの女の人と一緒に……。
「おいおい、そんなふうに下を向くなよ」
「だって……」
「……たくっ」
涙が溢れそうになっている私の額を、先生が掌で押し上げた。
その瞬間、視界の中で歪んで見えてた床が、呆れながらも微笑んでいる先生に切り替わった。
「しゃーない。
何があったのか聞いてやるよ」
先生のめんどくさそうな言葉が、何故かとても優しい言葉のように思えた。
またこんなふうに先生に話を聞いてもらうなんて……。
そう思いながらも、私の中に先生に救ってほしいという思いがあったのかもしれない。
だから、気がつくと学校に来ていたのかもしれない。
私は、言葉を詰まらせながらも先生に話をした。