恋 時 計 ~彼はおまわりさん~
再会
まだ鳥たちの囀りしか聞こえない日曜日の早朝に家を出た。
あの湖に行こう。
思い出とさよならするために……。
家を出て歩き始めた私の背中に、誰かが声をかけた。
「美樹ちゃん?」
その声の主は浅野さん。
久しぶりに会った浅野さんは、少し痩せたように見えた。
「浅野さん、お久しぶりです」
「本当に久しぶりだな。元気だったかい?」
「はい。浅野さんの腰の具合はどうですか?」
「ああ、君がくれた薬が効いて落ち着いてるよ」
良かった……。
浅野さんの微笑みにホッとした。
「お父さんの調子はどう?」
「今はリハビリを頑張ってます」
「そう……。記憶の方は?」
「え……? 今はまだ……」
「そうか……」
浅野さん、ずっとお父さんのこと心配してくれてたんだね。
胸の中が温かくなり始めた時、浅野さんとは違う声が聞こえた。