恋 時 計 ~彼はおまわりさん~
「先生……」
鼓動が声帯を震わせ、私の声は今にも泣き出すんじゃないかというくらい弱々しくなる。
だめ、ちゃんと返事をしなきゃ……。
冷えきっている手をぎゅっと握り、口から酸素を吸い込んだ。
「せんせ……」
「あのさー」
私の言葉を遮るように、急に先生が口を開いた。
緊張しすぎてどこを見たらいいのかわからない。
先生は、目を泳がせている私の瞳をしっかりと見つめ、
少しの間に、私の瞳は先生の瞳に捕らわれた。
「青木、緊張しすぎ」
くすっと優しい笑みを浮かべた先生。
「だって私、だってね……だって……」
先生の言葉が図星すぎて、訳のない言葉しか口から出てこない。
先生は、口をパクパクしている私に微笑んだ後、絡めた指先を前に突きだして背筋を伸ばした。
「俺も、緊張し過ぎてんだけどさ」
さり気なく口にした先生の言葉にドキッとした。
普段大勢の前で話をしている先生も、こういう時はやっぱり緊張するんだ。
私なんかのために、ドキドキしてくれるんだ……。