恋 時 計 ~彼はおまわりさん~



「弱くていい。それに、おまわりさんを好きなものは好きなんだから、無理に変えようとするな。
――そのままの青木で俺のところに来い」



真っ直ぐな瞳で私を見つめる先生の力強い言葉。


まるでゴールのない迷路の中でうずくまってる私に、頭上から手を差し出してくれたかのようだった。




その手を握ってもいいのかな?


歩き疲れて動けなくなった私は、迷路の上に引き上げてもらってもいいのかな?




涙が止まらず両手で顔を覆った。




「青木……?」


さっきとは違う先生の心配そうな声が聞こえてくる。



ごめんね、先生。

今はどんな顔で先生を見たらいいのかわからない。





「おーい、あおきー?」


今度は少し明るい先生の声が聞こえてくる。



そして、優しい温もりが私の体をすっぽりと包んだ。







< 509 / 712 >

この作品をシェア

pagetop