恋 時 計 ~彼はおまわりさん~




暗い世界に、紺色の制服を着たおまわりさんの姿だけがはっきりと目に映る。



おまわりさん……




必死に手繰り寄せてきた心の糸が切れそうになる。


私は無動のまま、おまわりさんを目に映していた。




「浅野さん、巡回の時間です」



おまわりさんの低い声が、私の耳を通して胸を射す。



「ああ、すまん。今行く」

浅野さんは、おまわりさんの方へと駆けて行った。





私の前から去っていくおまわりさんの姿に、胸が締めつけられる。



そんな私の手を、一哉は優しく包んでくれていた。



優しい一哉の手


この手を離しちゃいけない。









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