恋 時 計 ~彼はおまわりさん~
私の手を、同じくらいの強さで握り返してくれた一哉。
一哉は、おまわりさんを真っ直ぐな眼差しで見ていた。
少しの間の後、おまわりさんは私と一哉に体を向けた。
そして、ゆっくりと小さく頭を下げ、浅野さんが乗った車に乗り込んだ。
私は、おまわりさんがどんな顔をしていたのかわからなかった。
暗かったせいじゃない。
涙で視界が揺れていたから……。
全てが、波に包まれていたようだった。
波に流され、
どこか遠くへ消えていってしまうような……
車が走り去った後、
私は一哉の腕に包まれた。
一哉の腕の中で、全てを洗い流すように、涙を流した。