恋 時 計 ~彼はおまわりさん~



想いに潰されそうになった時、後ろからそっと抱きしめられる感触に包まれた。



「一……哉……?」



一哉は、声の代わりに、私の体を包む腕に力を加えた。



「一哉……」



振り返ることの出来ない私は、濡れた手で一哉の腕に触れた。


小さな水滴が、指先から一哉の腕に伝う。



唇を噛み締めた私の耳に、一哉の声が響いた。



「ごめん、泣かせて……」


「ちがっ、一哉のせいじゃない……」



首を振った私に、一哉は首を振り返した。




「俺、本当は美樹に、あいつのことを忘れてほしいって思ってた。情けないけど、心底思ってた……」



一哉……。



「けど今は、忘れさせてやりたいって思ってる。美樹には笑っててほしいから……」






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