恋 時 計 ~彼はおまわりさん~
「ごめんね、心配かけて。もう余計な詮索はしないから」
私の言葉に顔を上げた一哉は、いつもの微笑みを見せてくれた。
「きっと大丈夫だよ。警察が解決してくれる」
「うん、そうだよね……」
警察が解決してくれる――
一哉の言葉が、何故か心に引っかかった。
「じゃ、行ってくる」
「いってらっしゃい」
玄関を出て朝陽の中に向かって行く一哉に手を振り、
もう片方の手で合鍵を握り締めた。
一哉の言葉は、正論だよ。
事件の解決は、警察がするもの。
それなのに……
一瞬、他人事のように思われた気がした。
充分すぎるくらいに、私のことを理解してくれている一哉なのに……。