恋 時 計 ~彼はおまわりさん~
その場にしゃがみ込んだ私の背中を、一哉は何も言わず優しく擦ってくれた。
そして少しの間の後、静かに口を開いた。
「美樹をこんなふうに泣かせられるのは……ただ一人、だよな?」
その言葉に顔を上げた私は、一哉の顔を見つめた。
今朝と変わらず優しく微笑んでくれている一哉。
一哉は、全てをわかってる……。
私の心を知っている。
「一哉……」
「何て言ってほしい? 俺がどうすれば美樹は幸せになれる?」
「ごめんなさい……」
「謝らなくて良いよ。謝らなくて良い……」
微笑んだ一哉の悲しい瞳が、大粒の涙を誘う。
視界が涙で埋め尽くされた時、静かな声が聞こえた。
「俺は、この手を離さないから」