恋 時 計 ~彼はおまわりさん~
私は握っていた一哉の手に鍵を渡し、涙を堪えて微笑んだ。
ありがとう。
こんな身勝手でどうしようもない私を好きだと言ってくれて
ありがとう……。
ありがとう――‥。
数えきれないくらいのありがとうを、鍵とともに託した。
背を向けていたホームに電車が停車すると、一哉は『これ?』と聞くように、首を小さく傾げた。
私は少し戸惑いながら頷き、立ち上がった一哉を見上げた。
「一人で、立てるよな?」
私を見下ろしている一哉に頷き、ゆっくりと立ち上がった。
だけど、今すぐおまわりさんを追いかけるなんて……。
足を動かせずにいる私の背中を、突然一哉が押した。
「これが最後!」