恋 時 計 ~彼はおまわりさん~
太陽が沈み、街は人工の光で輝きだした。
夏の香りを消すように、お酒やたばこの匂いが鼻を擦る。
どこに行けば会える……?
どこに行けば……。
街中を抜けてしばらく歩いていると、一台の車が目に止まった。
あの車――。
おまわりさんの家に止まっていた車だ。
訳もなく、そう確信した。
この辺で赤い車なんて滅多に見かけないし……
それに、あの時と同じ痛みがこの胸に走った。
もしかすると、おまわりさんが乗っているかもしれない。
駆け寄ろうとした時、信号が青に変わり車が発進した。
「待って!!」
咄嗟に叫んだ声は届くはずもなく、残された力を振り絞って必死に車を追いかけた。