恋 時 計 ~彼はおまわりさん~



お父さんの病室に行くと、お父さんの姿だけがなかった。



どこに行ったんだろう。

リハビリの時間はまだのはず……。



病室の前の廊下を歩いていると、お母さんの姿が目に映った。



「お母さん?」


足早にこっちに向かってきたお母さんの表情は、いつもより目が大きく緊張した面持ちだった。



「お父さんに何かあったの!?」



私の不安な声に、お母さんは首をふって答えた。



「今朝、お父さんの記憶が戻ったのよ」





お父さんの記憶が……。



じゃあ、あの爆破の中で何が起こっていたのかを思い出したってこと?

事件の解決に繋がるかもしれない。



「お父さん、どんな事を思い出したの?」


「それがね……」




お母さんは、口にしかけた言葉を止めて、目を涙で滲ませた。







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