恋 時 計 ~彼はおまわりさん~



部屋に戻って窓を開けると、夏に変わろうとしている春の風が髪を揺らした。



「気持ち良い……」




親戚のおばさんの家はここよりも田舎で、空気が澄んでおいしかった。


けど、やっぱりここが良いな。

なんだか懐かしい香りがする。



窓から顔を出し、瞼を閉じて胸一杯に空気を吸い込んだ。





この街で、どんな事件に巻き込まれたのかはわからない。


わからないけど、今こうして私は生きてる。

それはとても素敵な奇跡だよね。




空気を吸っておいしいと思うこと。


太陽の光が眩しいと思うこと。


肌で風を感じること。


こうやって桜の花を――





えっ……














瞼を開けると、たくさんの桜の花びらが空を舞っていた。








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