夏の想
だから、私はこうやって、親と一緒にご飯を食べたかった。


家庭の、家族のぬくもりを、感じたかったんだ。


「私、お母さんと、またこうやって、一緒にご飯食べれるようになって嬉しいな!」


「お母さんも嬉しいわぁ。夏芽、本当に大きいわね。身長も、私より大きいんじゃないかしら?」


「アハハ。そんなこと、ないでしょー!」


こんな、他愛もない話が、楽しかった。


お母さんが、私と会いたいと言ってくれたこと、本当に、嬉しくて、愛おしくて―。


「夏芽、ご免ね?あなたを置いていって…」


「ううん。お母さんが、もう一度、私に会いたいって言ってくれたことだけで嬉しいよ。私」


「夏芽、いい子ね」


「そんなことないって!ご馳走様でした!お母さん、凄く美味しかったよ!有難う」


「有難うね。そう言ってもらえると、つくりがいがあるわ」


「そう?じゃぁ、もっとつくってね!なーんて」


「ええ。もっとつくっちゃうわ。さぁ、お風呂が沸いているわ。入りなさい。あ、パジャマとか、ジャージとか、着替え、ある?」


「うん!ばっちし。じゃぁ、入ってくるね」


そして、お風呂に入って、お風呂あがりにデザートを食べて、テレビを見て、私は寝た―。
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