夏の想
「雪芽、お前、何でもかんでも欲しい欲しいって、世の中そんなに甘くないんだぞ」


俺は、そうはき捨てると、部屋に戻った。


『ピーンポーン』


「はーい」


~ここからは夏芽視点~


「…」


ガチャッと玄関のドアの開く音がする。


誰だろうと、階段を利用して、相手からは見られないように見た。


「!!!」


私は、口に手を当てた。


ママと、お父さんッ…。


今までこなかったのに…。どうして今更くるの?意味わかんない!


「なん、ですか?いきなり…」


「夏芽がここに、いるだろう?返してほしいんだ」


「夏芽は、自らここに来たいと言ったわ。どうしてか、その理由もちゃんと聞いた。自分の本当の娘しか愛せないような人に、あの子を渡せない」


「夏芽を、呼んでほしい」


「夏芽ー!!!」


私は、階段を下りてきたように見せかけ、その場に出た。
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