天の涙、太陽の花
序章
夜。おとぎ話だったら『見上げれば空一面の星が─…』なんていう一節が出て来そうだが、ここは東京。

街の灯や車の排気ガスに汚染されて、そんなものは欠片(かけら)もない。


見渡しても目に入るものは人と、夜とは思えない程の明るい光を放ち合うネオン。圧迫感と体の休まらない緊張で、心身共に疲れる。


降水確率30%という予報は見事に外れ、土砂降りになっている。

足早に行き交う人込みの中、傘もささずに歩き続けている女が一人─…。



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