**confection**



清潔感の漂う店内は、明るくてなんだか無駄な小物類でも買ってしまいそうな雰囲気になる。


海外の輸入雑貨が多い店内は、色とりどりの鮮やかなモノが多く、生活用品なんかも数が多く取り揃えてある。



「あっ…か、かわいい…」



突然腕を引っ張られたと思ったら、ももが立ち止まり声を絞り出すようにして目を向けている。



ん?と思い、ももの視線の先を辿ると、何やら四角い木と硝子のようでできた箱が並んでいた。



「…オルゴール?」



可愛い…か?


女の言う可愛いは、俺には理解できないな。



1つ手にとって眺めてみると、小ぶりで手のひらサイズのそのオルゴールは、中身にアクセサリーが入れれるようになっているみたいだ。



チラリと視線を下げると、夢中になってオルゴールを眺めるももが居る。



……。



もちろん、手を離されてしまっていて、ちょっとガッカリしている自分も居る。



ふーん…。


そんなにいいモンか?




試しに手にしたオルゴールを、ゆっくりと開いてみる。



ポロン…。



可愛らしい音色が、箱の中から溢れ出す。


思わずそれに耳を傾けてしまうと、いつの間にか周りの景色が入ってこなくなっていた。



聴いた事のある、切ないバラード。



多分誰もが一度は聴いた事があるであろう歌だが、曲名も歌手名も分からなかった。


今までは、何とも思わなかった歌さえも、歌詞が頭に浮かんだ途端、胸が締め付けられるほどに苦しくてたまらなくなった。



心境の変化なのか、届かぬ恋を自分がしているからなのか。



心地良いはずのオルゴール音色が、余計にそれを切なくさせた。
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