**confection**
片思いが一番楽しいなんて、誰が言いだしたんだろう。
誰か分かるのなら、今すぐその鼻面目掛けて、拳を一発お見舞いしてやるのに。
俺にはまだまだ、その片思いの醍醐味なんて、全く理解ができない。
伝わらない気持ち。
伝えれない気持ち。
消化不良を起こしてしまったように、胸の辺りがモヤモヤとして、消化しきれずたまっていく。
それどころか、今にも溢れ出して止まらなくなりそうなのに。
この症状に、効く薬はないだろうか……。
医者に行ったら、精神科になんか案内されたりするんだろうか。
まあ、まず鬼畜兄貴に見てもらおうもんなら、鼻で笑われておしまいだろう。
それどころか、笑われる前に帰れの一点張りに違いないんだろうけど。
それか、全く関係のない説教をたらたらとされるか………
……って、なんでアイツの事がここで出てくんだよ。
顔を見るだけでも逃げ出したくなるのに。
ちょっとだけ、ほんの少〜し、本当に少〜〜〜…しだけ、人生の先輩である兄に、恋愛についての処方箋を出してほしいなんて思ったりもしたけれど。
「どうしたの?」
「え!?あ?いや…ちょっとな」
もんもんとよそ事を脱線しながら考えていた俺は、ももの不思議そうな声で意識を覚醒させた。
やっぱり兄貴には笑いのネタを提供するだけだ。
それどころか、俺が地元に帰る頃には、地元中に俺の赤裸々な片思いの話が筒抜けに出回ってるだけだ。
「ふーん?るぅちゃんって、やっぱり何考えてるかよく分かんないね」
クスッと笑ったももに、溜め息を吐きそうになり飲み込んだ。
お前だよお前。
お前の事を考えてんだろーが。
なんだかうまく言葉にできなくて、気持ちを誤魔化すように、べー…と舌を出して見せた。