**confection**
感じた事のない感覚に、戸惑ってしまう。
パッと見た感じでは、冷めたような堅そうな雰囲気なのに、彼女の笑顔は甘く溶けて染み入るようだ。
「何て呼べばいい?」
「え?別に呼び捨てでいいけど」
「唯ノ瀬って?」
そう答えた俺に、彼女があはは、なんて笑う。
「ももでいいよ」
目を細めて、唇を持ち上げて笑う笑顔は、何か心が綻ぶようだ。
……ふーん…。
…可愛いじゃん。
「んーじゃ、ももって呼ぶ」
「うん。私は何て呼べばいい?」
「俺?呼び捨てでも何でもいいけど」
そう言った俺に向かって、考えるように眉をしかめた彼女に、表情が豊かだなあ〜なんて思った。
「るい…ん〜…松風〜…」
うーんと悩んでいるももが可笑しくて、顔の筋肉が緩んでしまう。
そんなに悩む事か?
なんて思いながらも、どこか嬉しく感じている自分が居た。
自分の呼び名を考えるだけで、こんなに一生懸命に考えてもらうなんて正直初めてだ。
「るぅ!!るぅちゃん!!」
「…るぅ……ちゃん??」
るぅ?何故にるぅなんだよ。
それに…ちゃんって………。