**confection**




呆然とする俺とは対照的に、ももがふわりと笑う。


甘酸っぱいイチゴが、口いっぱいに広がり、それが全身に毒のように広がっていく。


次第にそれは、俺を末期にしていく致命的なダメージを与える猛毒だ。



それに輪をかけたような、ももの笑顔。


俺は完璧に、致命傷を負った敗者だ。



「おいしいでしょ?イチゴ甘くない?」



「…甘いな」



……――お前がだよ。




もう、なにをどうすればいいかなんて、今の俺には分からない。


まるで時限爆弾でも抱えてしまったかのように、そのリミットは刻々と時を刻む。



爆弾したら、最後。


その最後がどうなるかなんて、検討すらつかない。


まだエピローグは開けたばかり。


エンドロールを迎えるには、まだまだ中盤にすら差し掛かってなんかいないんだ。



未だ迷い続ける迷路の中、出口までの道のりは、二手に分かれている。


そんな中、抱えてしまった時限爆弾。



あまりのリスクに躊躇してしまうが、そんな時間はないのだろう。



先の見えない未来に、不安は誰しも抱えるモノ。


誰もがみんな、迷いながら進み、その先の未来に喜びを求める。


でも俺には、それ以前の問題なのかもしれない。



「はあ、幸せだあ…」




今目の前にあるこの笑顔を、曇らせる事のないように守る事だけが、今の俺にできる事なのかもしれない。



言葉にできないもどかしさ、触れられない切なさ、想いを伝える事ができない辛さ。


火蓋は切って落とされた。
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