**confection**
scorch
「なんかごめんね?ご飯までご馳走になっちゃって」
申し訳なさそうに言うももが、上目で俺を見上げる。
人々の喧騒から離れた住宅街を、ももと暗がりの中並んで歩き進む。
賑やかな通りを抜け、裏へと入ると車の通りが忙しない。
人はまばらにちらほらと見えるが、今さっきまでいた場所と比べたら、余計に暗く感じてしまう。
「ん?いや、俺の買い物も付き合ってもらったし。それに、ごめんじゃなくてありがとうがいいんだけど?」
これは、本心からの言葉。
結局俺のワガママに付き合ってもらったんだから、これくらいはしたい。
それに、男として普通だろうし。
「うん…ありがとう」
「いーえ」
店を出る時に、送ると言う俺を最後まで拒否していたももだったが、折れない俺にももが折れた。
自分で言うのもなんだが、俺は結構頑固な所があると自覚している。
でも今回は、さすがに道も暗くなっているし、時間も時間なので譲る気はサラサラなかった。
話を聞くと、ももの家はどうやら俺の住むマンションとはご近所さんらしいので、帰り道で考えると通り道に当たる。
それを踏まえて押し切ってみると、やっとももが折れたのだ。
「でも、るぅの家までの道は大丈夫?」
「うん。それなりにライフラインとして把握してるよ」
生活していく上で、自分がどんな土地に住み、どこに何があるのかを知っておく事は、最低限必要な事だ。
棚ぼた式にももの家を知れるのは、なんとも嬉しい話ではあるけれど。