**confection**
「お母さん、るぅが居るからやめてよ。その話はもう終わったでしょ?」
「なに言ってるの!!大事な事よ〜?自分で勉強も大切だけど、やっぱり予備校には通いなさいよ」
「…自分で勉強するから大丈夫。もう塾とか予備校とか、そーゆうの嫌」
「大丈夫じゃないから言ってるの!!あなたの事を思ってなのよ?」
う、うん…熱心な教育ママなんだな…。
子供を思っての事には違いないんだろうけど…なんか…てか、ももって首席入学だろう?
確かに進学校ではあるけれど…これ以上賢くなって、一体これから何を目指すつもりだ?
「あ〜あ…また始まった」
「…え?」
ポツリと小さく呟いた隣の勇磨に、思わず視線を向ける。
呆れたように眉を寄せ、困ったように言う姿までやっぱりイケメンで。
男で年上の俺でさえ、目を奪われてしまう程だ。
「うちの親…成績の話しかしないんで。ねーちゃん相手だと特に」
げんなりしたように、小さく舌を出した勇磨は、聞こえていないかのように顔を伏せる。
「ねーちゃんバカ正直なんで、俺みたいに流せないんですよ」
「…なるほどな」
ももの性格からして、確かにそうなんだろう。
しかもそう言っているのが、身内である弟なら尚更だ。
でも、成績は抜群どころか、突っ込む要素すらないももにとっては、それは相当なストレスにしかならないのではないだろうかと思う。
「前回はトップだったにしろ…次は分からないだろう?」
「そおよ?だから頑張らないとダメでしょう?」
そんなおじさんとおばさんの言葉には、もうももからの返事はなかった。
その表情に、ようやく答えを見つけたような気がしたんだ。
冷め切ったような、切なげな、なんだか悲しみすら感じるような……とても、寂しそうな瞳。
でも答えなんて、答え合わせをする答えがないから分からないんだ。
ももの気持ちが分かるような、そんな魔法や道具があれば…なんて、そんなことまで考えてしまうんだ。