**confection**
耳にはもも達の会話は入ってくるのに、勇磨の言葉に耳を傾けてるせいか、内容なんて入ってこない。
それどころか、ももの声なんかは何時の間にかなくなっていて、その存在さえもなくなってしまったようにすら思える。
「あのさ…いつもって、しょっちゅうこんな会話?」
「え?ああ、はい。そうですね。あの2人、やけにねーちゃんに期待してるんで」
「なるほどなあ…」
人の家庭の事情に首を突っ込むなんて、するべきではないだろう。
でも、こんなにもオープンに繰り広げられている会話に、そう聞かないではおけなかった。
「まあ…今日はねーちゃんなだけで、普段は俺もよく言われてます。受け流してますけど」
「そ、そうなんだ」
「だからねーちゃん、最近は反発するのも激しくなっちゃって」
苦笑いした勇磨は、やれやらと言ったように肩を竦めて見せた。
弟なのに、こんなにもしっかりしてるのは、なんとなくももを見ていると納得してしまう部分がある。
もちろん、ももを見ているから自然と身に付いたのだろうけど、それと同時に親の小言を受け流す術も身に付けてしまったのだろう。
なんだかこう話をしていると、ふと胸が切なくなる。
ある人物が自然と勇磨と被り、何とも言えない思いに駆られる。
生きていれば、勇磨と同い年ぐらいだろう。
「勇磨…でいいか?」
「もちろんです!!」
元気よく答えた勇磨に、自然と笑ってしまった。
なんか、やっぱり被る。のは、性格さえも似ているからかもしれない。
「敬語なんて使わなくていいし、呼び捨てでいいから」
純粋に、可愛がってやりたい。と、そう思った。