**confection**




「あら、そう〜?でもそうよねえ。いくら親御さんと一緒に住んでないからって、高校生だものね?」



本気で残念そうに言うおばさんに、小さく笑って返した。



まあ、うちは元々…放任だったから門限もなにもなかったんだけど。



「いえ…アップルパイ美味しかったです。ごちそうさまでした」



いただいたアップルパイは、甘過ぎず、さっぱりとした甘さと林檎の酸味が嫌味じゃなく、パイ生地がサクサクで本当に美味しかった。



チラリとテーブルに視線を向けると、もものお皿には殆ど手の付けられていないアップルパイが目に入り、なんだか寂しく感じる。



「松風君、家まで送るよ」



「俺も付いてく!!」



…え?送る?



「え!?そっ、そんな大丈夫ですから!!徒歩でも大した距離じゃないんで!!」



いやいや、いきなりそんな厚かましすぎる。


それに、車を出してもらう程、距離がある訳でもない。



何気なくももに視線を向けると、冷たい横顔が目に入る。



なんだかその横顔からは、敗北感と言うか喪失感と言うか…とにかく覇気を感じられない。



「どうした?遠慮なんていらないよ。さ、行こうか」



「え…?いや、本当に大丈夫ですから…」



思わずももを見ていた事を見透かされたような気になり、慌てごまかす。


反対に、ももにはこちらのやり取りなんて耳にも入っていないようだ。


そこだけ隔離したかのように、まるでももの周りには壁でもあるかのゃうに、誰も寄せ付けない雰囲気が漂っている。



ももが気になりながらも、こちらも断れそうにない。



「今度遊びに行きたから、家教えて!!」



「う…ん〜…そう……だなあ」



「じゃ決定ー!!行こう!!」



仕方なく甘える事にして、苦笑いをして頷いた。


こりゃ、本気だな……。
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